単語を重ねると稲川淳二語りになる
今朝ね、いつもより早い時間に目が覚めたんですよ。
鼻先に獣臭い風を感じた様な気がしてね。
イヤだな~、怖いな~、イヤだな~って思ってたらね、その獣臭い風が強くなった。
ふ~ふ~ッ!ふ~ふ~ッ!てね。
あたしは布団の中で身動きが取れなくなってね。
目も開けられない。
だっておかしいんですよ。
家にはピノちゃんって家猫がいるんですがね、
ここ1ヶ月、あたしの部屋には入ってないんですよ。
居間と仏間の往復でね。
だからね、これはピノちゃんじゃない。ピノちゃんじゃない。
イヤだな~、イヤだな~って身を固くしたワケだ。
そしたら風が移動しましてね。
耳元でふ~ふ~、ふ~ふ~ッ!って風を感じるようになったんですよ。
あたしね、それを聞いた途端、ぞ~っとしたんだ。
だってね、ピノちゃんじゃなければ明らかに変質者じゃないですか。
だからね、あたしは勇気を出して声をあげてみたんだ。
「ニャンコかっ!?」
「にゃっにゃ~ん!」
ピノちゃんだったんですよ。
1ヵ月ぶりにピノちゃんがあたしの部屋にやって来てねぇ。
いや~、みなさん。こんなことってあるんですねぇ。
でもね、なんかおかしい、な~んかおかしい。
ピノちゃん、あたしの腕枕をスルーしてましてね、5冊くらい積んであるジャンプの上に乗ったり、カーペットを匂ったり落ち着かない。
なんでかな~、なんでかな~って考えた。
そしたらね、階下から音が聞こえてきたんですよ。
ガサガサガサ、ジャッジャッジャ、
ガサガサガサ、ジャッジャッジャ…
ガサジャッジャッジャッジャッジャ…
うわ~、イヤだな~、怖いにゃ~、イヤだな~。
あたしが布団に潜り込んでガタガタ震え始めた時にね、ピノちゃんが鳴いたんだ。
「にゃっにゃ~ん!」
それであたしはピーンときた。
これは、おかんがピノちゃんのトイレを掃除している音だって。
ピノちゃん、自分の後片付けをあたしにやらそうと思って知らせに来たみたいなんですよ。
いや~、みなさん、こんなことって、あるんですねぇ。
音の原因が分かると、あたしは2度寝し始めたんですよ。
仕事の日ってのは、なぜかギリギリまで寝たいもんだ。
それでね、あたしは落ち着いたピノちゃんと一緒に布団に潜り込んだんですよ。
毛布の感触とピノちゃんの寝息が心地良くてね。
うつら~うつら、うつら~うつら。
浅い眠りに落ちたワケだ。
「にゃ~ん!」
突然、また鳴き声が聞こえたんですよ。
でもね、なんかおかしい、な~んかおかしい。
ピノちゃんの鳴き声じゃない。
ちょっとばかり甲高くてね、これは外で飼っている黒猫・チロルの声に似ている。
それは無いんですよ。
あたしの部屋はね、2階にあって、上がってくるならどうしても家の中を通らなきゃならない。
チロルが入っていいのは、台所の勝手口周辺だけだ。
それ以上、侵入すると、両親が止めるんですよ。
「こらーッ!」ってね。
だからチロルのはずが無い。
じゃあ、今、頭の上で鳴いたのは何なんだって話ですよ。
それであたしはピーンときた。
ああ、霊の仕業だってね。
…目を開けたらチロルがいましたけどね。
後から親父に聞いた話ですが、お勝手口から黒い突風が入って来たそうなんですよ。
それがね、一瞬で何か分からなかったんですって。
親父、ボソリと言ってましたよ。
「見落とした。
いやぁ、そういうこともあるんだなぁ」
ってね。
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